01
夢をはっきり言う
「ポニーが欲しい」と言葉にした瞬間、行動の方向が決まった。
一番最初の願い
それは、子どもらしい願いだった。 でも、その願いに対して父が返した答えは、子ども扱いではなかった。
「半分のお金を自分で集めたら、残りは出してやる。」
ポニーは百五十ドル。七歳のBradにとって、それは途方もない金額だった。 けれど、父の言葉は夢を消すためのものではなかった。 夢を現実に変えるための、最初の条件だった。
条件
父が出した条件は、厳しくもあり、やさしくもあった。 夢の半分は、Brad自身が作らなければならなかった。
子どもにとって七十五ドルは大金だった。 しかし、それは不可能ではない金額でもあった。 つまり父は、夢を遠ざけたのではない。 夢を届く距離に置き、その道を自分で歩かせた。
この瞬間、ポニーはただの欲しいものではなくなった。 それは、計画になった。 仕事になった。 最初の事業になった。
作戦
BradとBillyは、近所を歩いた。 ガレージ、家の裏、台所の隅に眠っていた返却瓶を探した。
当時、ガラス瓶には返却価値があった。 使い終わった瓶は、ただのゴミではなかった。 集めて店に持っていけば、少しずつお金になる。
二人は家々を回り、こう説明した。 ポニーを買うために瓶を集めています。 その言葉は、子どものお願いであり、同時に最初の営業トークだった。
最初の市場
どの家に瓶がありそうか。 どの道を歩くか。 どう頼むか。 どう運ぶか。
七歳の事業は、とても単純に見える。 しかしそこには、後のBradの仕事に何度も現れる要素がもう入っていた。
目的を決める。相手に説明する。信じてもらう。集める。 運ぶ。交換する。もう一度行く。 それは営業であり、物流であり、資金調達であり、未来へのアクセス作りだった。
交換
集めた瓶は、店へ持っていく。 そして、ほんの少しずつお金になる。
それは子どもにとって、価値が変わる瞬間だった。 ただの空き瓶が、硬貨になり、硬貨が七十五ドルに近づき、 七十五ドルがポニーへの道になる。
この体験は、後の仕事にもつながっていく。 誰かが見過ごしている価値を見つける。 それを使える形に変える。 そして、その価値で未来への入口を作る。
夢を言葉にして、歩いて集めれば、現実は少しずつ近づいてくる。IAC.co.jp 原点の記憶
その考え方は、のちに形を変えて何度も現れる。
新聞を検索できるようにする。 電子メールを届ける。 日本から世界へ接続する。 太陽光で電力を作る。 災害の前に家を守る。 AIで眠っていたドメインの夢を動かす。
どれも、別々の仕事に見える。 けれど、根っこにあるものは同じだった。 欲しい未来に届くための道を作ること。
達成
BradとBillyは、必要な半分を集めた。 ポニーは、夢ではなくなった。
父との約束は果たされた。 七歳のBradは、お金の意味だけではなく、信用の意味も学んだ。 約束を聞き、条件を理解し、条件を満たす。 その瞬間、子どもの願いは、仕事によって現実になった。
夢が現実になったとき、Bradはただポニーを手に入れたのではない。 目標を決め、働き、結果を出すことで、世界が少し動くことを知った。
責任
ポニーを手に入れた後も、物語は終わらなかった。 今度は、餌をやらなければならない。
最初の成功は、次の責任を連れてくる。 手に入れることと、続けることは違う。 ポニーは、達成の象徴であると同時に、継続の先生でもあった。
後の会社も、ドメインも、太陽光も、同じだった。 始めることは大切だ。 しかし本当の仕事は、始まった後に続いていく。
この章が意味すること
IAC.co.jpにとって、この章は飾りではない。 ここに、後のすべての原型がある。
01
「ポニーが欲しい」と言葉にした瞬間、行動の方向が決まった。
02
近所の人に目的を伝え、協力してもらう。最初の営業だった。
03
捨てられそうな瓶の中に、資金があることを見つけた。
04
どこへ行き、どう集め、どう運ぶか。アクセスには道順がいる。
05
条件を満たせば、信用が生まれる。信用は次の扉を開く。
06
ポニーには餌が必要だった。事業は、達成の後に責任が始まる。
小さな記憶のギャラリー
ポニーの章は、IACの前史であり、Brad Bartzの仕事の原型です。 夢、約束、説明、道順、交換、達成、責任。
未来への影
IACは、突然生まれた会社ではない。 それは、七歳のときから続いていた行動の延長だった。
ポニーのために近所を歩いた少年は、のちに日本でインターネットへの入口を作ろうとした。 瓶を集めた手は、フロッピーディスクを扱い、新聞データを整理し、BBSを動かし、 電子メールと検索の未来を見つめた。
何かへ届きたい人がいる。 でも、まだ道がない。 ならば、その道を作る。
それが、ポニーの章からIACの章まで続く一本の線だった。
次の章
ポニーで学んだことは、消えなかった。 声をかける。説明する。信じてもらう。もう一度電話する。
家族の仕事、展示会、電話、広告、販売。 Bradはさらに若い時代に、商売の現場へ入っていく。 そこでは、ただ売るだけではなく、人を動かす言葉と責任を学んでいった。