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言葉の橋
英語と日本語、外国人と日本社会。その間に、情報の橋が必要だった。
到着
Bradにとって日本は、地図の上の目的地ではなく、 自分の人生が大きく曲がる場所になっていった。
若いころから営業と電話で扉を開いてきたBradは、 日本でも同じように、まだ見えない扉を探した。 言葉、文化、商習慣、礼儀、速度、沈黙。 すべてが違っていた。
しかし、その違いは壁ではなかった。 むしろ、Bradには新しい入口に見えた。 日本には、まだ誰も十分に説明していない未来があった。
街の速度
電車、新聞、電話、会議、名刺、夜の明かり。 東京は、巨大な通信装置のようにも見えた。
人が流れ、紙が流れ、情報が流れる。 しかし、その情報はまだ十分に検索できるものではなかった。 英字新聞も、企業情報も、告知も、会員向けのニュースも、 多くは紙の中に閉じ込められていた。
Bradはそこに可能性を見た。 紙をデータにする。 データを探せるようにする。 探せる情報を、人の行動へつなげる。 それは後のMetabook、IAC-Online、Internet Access Centerへ続く発想だった。
日本は市場ではなかった。Bradの人生が、仕事と愛と発明に分かれていく場所だった。IAC.co.jp 日本の章
日本での物語は、ビジネスだけでは説明できない。 そこには、文化への驚きがあり、外国人としての挑戦があり、 そしてTomokoとの出会いがあった。
仕事だけなら、別の国でもできたかもしれない。 でも、IACの物語は日本でなければ生まれなかった。 新聞、検索、電子メール、ドメイン名、英語と日本語の間、 外国人起業家としての緊張と可能性。 そのすべてが、日本という場所で一つにつながっていった。
外国人起業家
日本の中にいる人には当たり前すぎて見えないものが、 外から来たBradには、未来の素材に見えることがあった。
新聞を毎日読む人がいる。 英語で情報を必要とする人がいる。 会社案内を探す人がいる。 日本と世界をつなぎたい人がいる。 けれど、その情報はまだ、一つの場所から簡単に探せるものではなかった。
外国人であることは不利でもあった。 しかし同時に、視点でもあった。 違う場所から来たからこそ、日本の情報の未来を別の角度から見ることができた。
名刺と会議
名刺を渡す。相手の名前を見る。座る位置を考える。 沈黙の意味を読む。
日本のビジネスは、ただ提案を持っていけば動くものではなかった。 礼儀があり、間があり、信頼があり、紹介があり、 小さな所作の中に相手への敬意があった。
Bradはアメリカ的な速度と営業力を持っていた。 しかし日本では、それだけでは足りなかった。 速く説明する力と、静かに待つ力。 その両方が必要だった。
新聞
英字新聞、ニュースレター、会員向け情報。 日本の国際社会には、読みたい情報がたくさんあった。
しかし紙は、読めても探しにくい。 切り抜きは残せても、横断して検索することは難しい。 情報が増えれば増えるほど、「探せること」の価値は大きくなる。
Bradは、新聞と検索の組み合わせに可能性を見た。 それは単に便利な道具ではなかった。 日本にいる外国人、企業人、研究者、読者が、 必要な情報へ早く届くための入口だった。
日本で見え始めたもの
日本での経験は、後のIACにつながる材料を一つずつBradの前に置いていった。 営業、新聞、検索、電子メール、ドメイン名、そしてTomoko。
01
英語と日本語、外国人と日本社会。その間に、情報の橋が必要だった。
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紙の情報は豊かだった。しかし、探しにくかった。そこに検索の必要があった。
03
接続は抽象的な言葉ではなく、電話線と機械と現場の問題だった。
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名前、会社、肩書き、紹介。日本では信用が丁寧に積み上がっていった。
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日本は仕事だけではなく、愛と家族の場所にもなった。
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Metabook、IAC-Online、Jmail、Japan.co.jp。その種は日本で育ち始めた。
日本の記憶
IACの前史としての日本。そこには、初期インターネット以前の空気と、 未来を説明しようとする若い起業家の姿があった。
次に来るもの
Bradの日本物語を、仕事だけで語ることはできない。 そこには、Tomokoがいる。
飛行機の中で出会い、1992年7月12日に結婚し、 初期インターネットの仕事も、後のABC Solarも一緒に支えていく女性。 慶應の知性、まじめさ、静かな強さ。 Bradが今でも彼女を見ると笑顔になる理由は、 IAC.co.jpの中心に置かれるべき記憶である。
次の章
日本は仕事の場所だった。 しかし、その空の上で、Bradは人生の中心になる人と出会った。
Tomoko Sakai Bartz。 慶應義塾大学を出た、賢く、まじめで、静かな強さを持つ女性。 彼女は物語の後ろにいたのではない。 最初から、物語の中にいた。